というのは、鉄のフライパンのことです。
ドイツの民芸品店というのでしょうか。ドイツ特産の品物が様々においてある
お店の天井近くにつってあったたくさんのターク を思い出すたび、
買っておけばよかった、と何度も何度もしみじみ思うのです。
その時はまだ、まだ少し若かったので、前年に買った鉄のフライパンがあるから
十分だと納得させることにしたのです。
セラミックのフライパンを落として割ってしまうし、フッ素加工のフライパンは加熱しすぎて表面をぼろぼろにはげさせてしまうし、結局、一体型の鉄のフライパンしかない!!と決心して、
さんざんいろんな鉄のフライパンを比較検討したあげく
味道 鉄製厚底フライパン28cmなるものを買ったからです。
2014年の頃、2530円でした。プロ用という言葉に惹かれて。
シーズニングをそのとき、初めて行ったのですが、恐ろしく手間がかかりました。
書いてあった通り、屋外でテーブルガスコンロを持ち出して行いました!!
中央が虹色になるまでっていうのがぴんとこなくて、本当にこんなもんなのか?
わからず、適当な勘所でやめましたけど、40分くらい格闘しました。
以来、5年間つかっていますが、タレがこびりついても、紙でふきとって、そのあと
たわしでごしごし。
ひどい汚れのときは、それこそ、金たわしでごしごしやっちゃっても、
びくともしません。最後に油を塗ってぴかーっと光らせると、
なんともいえない黒い輝きを放ってそこはかとない自信が満ち溢れて来るのです。
ああ、こんなことで幸せになれるなんて、人間って、ちょろいなとは思いますが、
そんなもんです。
底の厚みが2.3mmという記載が本当かどうか確認することはできないんですが、
餃子を焼くと本当にかりっと焼けます。鶏肉だろうが、豚肉だろうが、もちろん牛肉だろうが、
内側はジューシーに、外側はカリッと焼けます。なんともいえない満足感です。
もちろんこれで機能的には十分なんだけど、
どうしても、思い出しちゃうのがターク の素朴さ。
あの凸凹さを思いだすと、どうしても引き寄せられる。不器用な自分と重なるのかな。
もしターク を使えるとすれば、底厚が3.0mmになるから、もっと肉がうまく焼けるだろうし、プラス、肉が焼ける以上の満足感を得られそうなんですもの。
1枚の鉄を、屈強な男性が8000回も打ち出してつくられるターク の無骨さ。
ハンドルと本体が一体というのも本当に素晴らしい。
想像すると、ドイツの森の中の工場で、カンカンと手打ちで叩き続ける音さえ聞こえてきます。
それに見た目も表面が荒々しく、でこぼこしていて、
フライパンの縁もあまりなめらかではないようにみえて、人の手の味わいが伝わって来るものでした。本当に魅了されました。
この歳になると、自分がこの世にいなくなった後にも、
自分の代わりに数十年生きてくれる、
次の誰かに使ってもらえるかもしれないモノがある、と想像するだけで、
生きた証を次の世代にバトンできるかも、と思わせてくれる。
ただ、娘がその使い古したフライパンを使ってくれるかどうか全く期待できませんが。
ともあれ、今度、娘が帰国するときには、小さめの24センチか22センチのクラシックタイプを買ってきてもらおうと心に誓っています。
ただし、いつ帰国するのかわからないので、むしろすぐに手に入らないことを
ひとつの楽しみにしようと思っています。
もひとつ言うと、このターク なら絵本ぐりとぐらに出てくるカステラが本当にうまく焼けそう、
と妄想がふくらむのです。
コメント